都市公園 地域再生の核に(公明新聞より)

都市公園 地域再生の核に

公明新聞:2017年4月26日(水)付を掲載いたします。

東京・荒川区の都立汐入公園内に開設されたにじの森保育園

都市公園を活用して地域の課題解決やにぎわいにつなげる試みが注目を集めている。東京都荒川区や大阪市の事例とともに、今国会で審議中の都市公園法改正案を紹介する。

「保育所開設」

規制緩和し用地確保 併設の子育てサロンも好評 東京・荒川区

東京・荒川区の都立汐入公園内に開設されたにじの森保育園の園内の保育の様子新緑鮮やかな荒川区の都立汐入公園の一角。4月1日からオープンした認可保育所「にじの森保育園」を訪ねると、子どもたちの歓声が聞こえてきた。

延べ床面積約1400平方メートルの広い建物内には、保育室のほか、学芸会のできるホールや絵本が読める子どもライブラリーなどがあり、「楽しくて『家に帰りたくない』と話す子どももいる」と渡邉真弓施設長が説明してくれた。

本来、都市公園に設置できる施設は都市公園法により規制されており、保育所は開設できない。しかし、国は2015年、国家戦略特区に限って、公園内で保育所などを設置できるよう緩和した。公園の一部を不足する保育所の用地として活用し、待機児童対策を進めるのが狙いだ。

荒川区は、都と連携して同年11月に全国で初めて特区の認定を受けた。そして、これまで小学校の空き教室で運営していた、しおいり保育室を廃止するとともに、汐入公園内に同保育園を開設した。これにより保育定員は新たに63人拡大。公園の広場を園庭代わりに利用できるようにもなり、騒音対策など周囲への気遣いも減ったという。

その一方で、地元住民から保育所への理解を得られるよう配慮も欠かさない。

例えば、同保育園の敷地はもともとゲートボールなどに利用されていた場所だった。そこで、園の屋上に人工芝を敷き、一般開放できるスペースを確保。ゲートボールなどに利用してもらう。また、公園に遊びに来た親子が、気軽に休憩したり、おむつ替えなどに利用できるよう、園の建物内に地域子育て交流サロンも設けている。

渡邉施設長は「交流サロンを利用する親子連れが増えてきました。保育園に親しんでもらう、きっかけになればと思います」と話していた。

公明も積極推進

汐入公園内の保育所整備については、待機児童の解消に力を入れる都議会公明党と区議会公明党が連携して推進してきたもので、けいの信一都本部青年局次長(都議選予定候補=同区)も2月に建設現場を視察した。なお、こうした特区による規制緩和で公園内に保育所を開く取り組みは、東京の品川区や世田谷区のほか、仙台市、横浜市、福岡市でも始まっている。

「集客施設を誘致」

民間と協定結び再整備 来園年420万人 芝生広場が人気 大阪市

都市公園の一部を民間の力を得て再整備し、地域の活性化の核とするケースもある。その一つが大阪市の市立天王寺公園だ。

同市は14年に近鉄不動産株式会社と協定を締結した。同協定は、市が同公園の一角(約3ヘクタール)を20年間貸し出す代わりに、近鉄不動産は、そこに芝生広場やフットサルコート、飲食店舗、子どもの遊び場などを整備・誘致した上で、公園使用料として年間約3000万円を市に支払うという内容だ。

こうした協定による公園の再整備で、芝生広場を中心としたエリア「てんしば」が15年10月にオープン。1年間で約420万人もの入園者が訪れるほど盛況だ。

同公園を管理する市天王寺動物公園事務所の村川尚哉課長代理は「20年という中長期にわたる協定を結ぶことで、民間企業に収益が見込めると判断した。市は財政負担が掛からずに公園の再整備ができた上に、地域の活性化にもつながっている。行政と企業が「『ウィンウィン』(相互利益)の関係になっている」と話す。

都市公園法改正案が成立へ

今国会では、都市公園の活用を全国的に促す都市公園法改正案を含む都市緑地法等改正案が審議されている。同改正案は、公明党が積極的に推進してきたもので、25日に参院国土交通委員会で可決された。近く参院本会議で可決・成立する見通しだ。

同改正案は、国家戦略特区に限らず、全国の公園内に保育所などの通所利用の福祉施設を設置できるようにする内容である。

また、公園内に飲食店や売店といった収益施設の設置・管理を行う民間事業者の新たな公募選定制度も導入する。

収益施設の設置・管理と併せて広場などの整備を行うことを条件に、収益施設の設置管理許可期限を現行の10年から20年に延ばすことで、民間事業者が参入しやすくする