山口ビジョンを発表
本日の公明新聞に公明党の山口代表の方から公明党が目指す将来ビジョン「新しい福祉・教育・平和をつくる公明党『人道の先進国』日本へ(山口ビジョン)」を発表しました。
以下全文を掲載いたします。
Iはじめに
「100年に1度」の経済危機は、世界に深い傷跡を残しました。この危機の過程で、「人間」よりも「利益」を優先する経済至上主義に対する反省が起きました。
私たちは、ここで一度立ち止まり、何をめざし、どこへ向かうのか、考え直さなければならない地点に来ています。
公明党は、今こそ「人道の21世紀」への道を切り開こうと提案したいと思います。
「人道の21世紀」は、経済やイデオロギーの争いから抜け出し、人間の幸せの追求に最大の価値を置く新しい時代です。その先端を行く国を、私たちは「人道の先進国」と名付けました。
人道の先進国は、「一人を大切にする政治」から生まれます。
「上」から国民を見るのではなく、あなたの隣にいて一緒に歩む人こそが、いま求められている政治家なのだと思います。
あなたの隣には、公明党の議員がいます。市区町村議会、都道府県議会、国会の3000人を超える議員が、いつもあなたの声を政治に生かします。中央集権ではなく、地域から発信する政治が、ここから生まれます。
私たちは「人道の21世紀」に、一人ひとりに最大の価値を置く、地域主権の政治を実現させたいと考えています。
公明党は「福祉の党」「教育の党」「平和の党」です
われわれがめざす新しい福祉・教育・平和とは、すべての人が人間らしく生きていくために不可欠な「人道の基盤」となるものです。
公明党は、一人ひとりの生命・生活・生存を最大限に尊重する人間主義の道を歩んできました。45年前、結党に当たって掲げた「日本の柱 公明党」「大衆福祉の公明党」のスローガンは、「大衆とともに」の立党精神に基づき、福祉・教育・平和重視の国づくりをめざす公明党の初心、決意を宣言したものでした。
今や福祉は政治の中心テーマとなりました。われわれは、「福祉の党」「教育の党」「平和の党」という公明党の旗をさらに高く鮮明に掲げ、「人道の先進国」の構築に全力で取り組んでまいります。
われわれがめざす「人道の先進国」とは、一人ひとりを大切にする国、また世界の人びとを貧困や飢餓、環境破壊、紛争、感染症、麻薬などの脅威から守るため積極的に貢献する国です。
これからは女性と青年に光が当てられる時代です
「人道の先進国」はまた、女性の役割がより重要になり、青年に光が当てられる時代であると考えます。女性と青年が夢と希望を持てる社会こそ21世紀の国づくりの基本です。
「生命を慈しみ」「生活を守る」女性の特質が生かされていけば、政治も経済も社会も、より生活者重視、消費者重視、地域重視に改革されていきます。また、変革への情熱あふれる青年の力なくして勢いのある未来志向の国づくりは不可能です。
公明党は、女性の生活感覚に根ざした豊かな発想、青年の柔軟で斬新な視点を真摯に受け止め、具体的な政策に高めていく努力を積み重ねていく中で、女性と青年が伸び伸びと活躍できる社会、思う存分に力を発揮できる社会の実現をめざします。
「清潔な政治」をめざし、政界の大掃除に取り組みます
政治とカネの問題が相次ぐ中、清潔な政治の実現なくして国民の信頼を得ることはできません。公明党はこれまでも、秘書などの会計責任者が政治資金で虚偽記載等の違法行為を行った場合は監督責任のある議員も公民権停止にすることを主張し、そのための法案提出を行ってきました。
国民の信頼を得られる政治を実現するために、今後もさらに政界の大掃除に取り組んでまいります。
日本の未来のために公明党「3つの挑戦」
団塊の世代が75歳以上になる2025年から日本は少子高齢化のピークを迎え、人類が経験したことのない超高齢社会が到来します。急速な少子高齢化と人口減少が同時に進む中で、若年層に顕著な雇用不安など直近の危機を克服しつつ、安心の日本へと進路をいかに切り開いていくか。
この文明史的な課題に立ち向かう私たちの将来ビジョンとして、次の「3つの挑戦」を掲げ、政策判断の軸としてまいります。
第1に、日本社会のあり方を中央集権型から地域主権型に組み替え、自助・共助・公助の調和した、分かち合いと支え合いの「地域で支える協働型福祉社会」をめざします。
第2に、「子どもこそ主役」との理念に基づき、掛け替えのない子どもたちの個性・能力・創造性・思いやりの心を育むことを最優先する「教育のために行動する社会」をめざします。
第3に、貧困や紛争などあらゆる脅威から人間を守る「人間の安全保障」に立脚し、「核兵器廃絶、平和、環境で世界に貢献」する日本をめざします。
「大衆とともに」の立党精神に立脚した3000人を超える議員ネットワークは、他の党にはない公明党ならではの最大の財産です。この「KOMEIチーム3000」の力を最大限に発揮し、新しい福祉・教育・平和を創る「人道の先進国」日本の国づくりに党の総力を挙げて挑戦します。
II公明党の「3つの挑戦」
1 「中央集権」から 「地域主権」へ
地域で支える協働型福祉社会の実現
協働型福祉社会で豊かな高齢社会を
昨年、日本は人口に占める65歳以上の割合が22%に達しました。このような急激な少子高齢化を経験した国はありません。私たちは国民の皆さまの知恵を集めて超高齢社会を豊かなものにするため、「地域で支える協働型福祉社会」を提唱します。年金・医療・介護・子育ての各分野で、一人ひとりのニーズに合った分かち合い支え合う協働型のきめ細かなサービスの仕組みをつくり、それぞれの地域の実情に合った給付を実現します。
セーフティーネットを拡充し、 貧困層や無年金者を支援
福祉や雇用のセーフティーネット(安全網)から漏れた貧困層や年金のない方たちへの支援に取り組みます。そして年金・医療・介護などの各分野で人間が人間らしく生きていくために必要な「ナショナル・ミニマム」(最低限の給付水準)をつくります。このために必要な財源を確保する観点から、所得、消費、資産のすべての税制を見直します。
税と保険料の一体改革
新しい福祉社会を構築するため、税と社会保険料の一体的な改革も視野に入れ、負担と給付の総合的なビジョンを策定しなければなりません。また、所得再分配機能の強化、給付つき税額控除制度の創設、納税者番号制の導入などの具体的な検討を開始します。
今後、日本の後を追うようにアジア諸国でも少子高齢化が進行します。こうした国々にとってモデルとなり、道標となるような日本型の福祉社会を創り上げることは、まさに人類文明史的な課題であり、われわれに課された重大な使命です。
新たな成長戦略で持続可能な社会保障制度に
社会保障制度を長期にわたって確実に機能させるためには、一定の経済成長が必要です。私たちはモノづくり産業の再生や、環境と農業を軸にした「緑の産業革命」、医療・福祉の雇用拡大と技術革新などで経済が成長し続けるような仕組みをつくります。
2 教育のために行動する社会へ
「子どもの幸福」を最優先する国に
子どもの幸福へ、教育のために行動する社会を
公明党は、社会のために教育があるのではなく、教育のために社会があるべきと考え、掛け替えのない子どもたちを最優先する社会づくりをめざします。誰もが自分らしく生きることができる社会をつくるためには、教育の深さこそが一人ひとりに幸福をもたらし、社会の未来を築くことになるからです。
少人数指導制など教育環境を整備
教育の危機は未来の危機です。私たちは思いやりの心を育む教育に全力で取り組みます。
公明党は、複数担任制などを含む少人数指導制や子どもたちの可能性を最大限に引き出すことのできる「教育者の育成」に取り組み、地域で子どもたちを育む環境を整備します。
教育格差の是正へ公的支出を増加
親の所得格差で家庭の間で教育格差ができてはいけません。学校間や地域間の格差問題も同じです。子どもたちから教育の「機会の均等」を奪う教育格差の解消に全力を挙げます。
子どもたちが経済的な理由から十分な教育を受けられないことがないように、公的支出を増やしていきます。
キャリア教育の拡充や生涯教育の充実
働くことはただ収入を得る手段ではなく、自己実現の機会でもあります。「職」を通じて、子どもたちが社会とのつながりを体感し個性を開花させていけるように、小中高校におけるキャリア教育を拡充します。さらに、社会に出た後も学べる生涯教育の環境整備を進めます。
3 「人道の先進国」へ
核廃絶、平和、環境で世界に貢献する国に
基本理念は「人間の安全保障」
公明党は、平和の党です。基本理念、行動原理として「人間の安全保障」を掲げ、世界平和に貢献する日本を創ります。「人間の安全保障」とは、貧困や飢餓、紛争、環境破壊、感染症、麻薬などの脅威から一人ひとりの人間を守るという考え方です。私たちは核兵器廃絶と平和の構築、持続可能な地球環境を実現してまいります。
全世界で「核兵器禁止条約」の締結をめざす
核兵器の廃絶は世界人類が願う最重要課題です。唯一の被爆国・日本の使命を果たすべく、政府は今後も非核三原則を堅持するとともに、「永遠に核兵器を保有しない」方針を明確に宣言すべきです。さらに、核軍縮・核不拡散に関する構想と道筋を示したロードマップ(行程表)の策定などで先導的役割を果たすことは、国際社会におけるわが国の重要な役割です。
核兵器保有国・非保有国を問わず、この規範を広めるため「核兵器禁止条約」を提案し、2020年までに世界の国々が同条約を締結することをめざします。
低炭素社会実現のリーダーとなって地球を救う
公明党は環境の党として、温室効果ガスの「2020年、25%削減」目標を掲げ、短期と中長期にわたる独自の環境ビジョンをつくります。同時に、日本の環境技術・人材を世界に「輸出」するなどして、日本経済を活性化させるとともに各国の温暖化対策に積極的に貢献していく国づくりをめざします。
IIIむすびに
「地域主権型道州制」で、国家公務員数を半減
公明党は、新時代の福祉・教育・平和を創るため、社会のあるべき姿として、国道州基礎自治体の3層構造から成る「地域主権型道州制」に移行することをめざしています。ここでいう基礎自治体とは、地域で支える協働型福祉社会を持続可能なものにするために必要な権限と財源を持ち、行政サービスの拠点となるものです。道州制の導入に伴い、中央政府の役割を外交・防衛、通貨の発行・管理などに限定して官僚機構を改革、国家公務員数を現在の半分以下にします。
超高齢社会を支える「自助・共助・公助」
本格的な超高齢社会を乗り切るためには、できるだけ個人が自立して生活する自助、地域住民の連帯でお互いを支える共助、行政などによる公助が最もバランスよく効果を発揮し、分かち合い支え合う協働型の社会を築かなければなりません。
公助を最大限に強化するとともに、NPO(民間非営利団体)など共助を担う市民活動団体の役割が極めて重要であり、共助なくして超高齢社会を支えることはできません。
また、社会貢献に参加すること自体が人々の生きがい・喜びとなり、地域活性化を促す環境整備が不可欠です。そのため、NPOなど市民活動団体を支援し大幅な増加をめざします。
地域活性化を総合的に推進
さらに、人口減少下での地域活性化を促進するため、定年退職者の地方移住や農業、観光業への就労を通じた大都市圏から地方への人口移動を促進します。国の出先機関については、地域活性化を総合的に担う新たな機関へと再編統合し、人口増や農業生産高など具体的な数値目標を盛り込んだ長期計画を策定・推進します。
以上、新しいビジョンに基づき、われわれは具体的政策を創り、一人ひとりが誇りを持てる「人道の先進国」日本を築いてまいります。