公営企業会計決算特別委員会で質疑。(10月27日)
病院会計について質問
質疑概要について掲載いたします。
令和2年度公営企業会計決算特別委員会第2分科会(病院会計)最終版
長引くコロナ禍の中、医療現場で献身的に働かれておられる医療従事者の皆様に心から感謝申し上げます。
令和2年度東京都病院会計決算について質疑させて頂きます。
- 決算概要
- 病院経営本部は都民の生命と健康を守ることを使命とし、高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられた「行政的医療」を適正に都民に提供し、他の医療機関等との密接な連携を通じて、良質な医療サービスの確保を図るという役割を担っております。
- 令和2年度はコロナ禍の中でコロナ病床として、令和2年度末には1日当たり都立・公社病院で1700床を確保したとのことでした。
Q1 そこでまず、令和2年度の都立病院のコロナ病床の確保実績と患者受入れ実績、病床確保により交付された国庫補助金額について伺う。 |
A1
- 令和2年度の確保病床は、年度当初は1日当たり164床であったが、その後の感染状況に合わせ段階的に拡大し、年度末には都立病院の病床全体の約2割となる1日当たり820床を確保した。
- また、コロナ病床を確保するため、コロナ患者の対応には通常よりも手厚いケアが必要となることから、必要な人材を他の病棟から集約する必要があり、年平均1日あたり420床の病床を休止した。
- こうした取組により疑いを含め延べ62,515人のコロナ患者を受入れ、国庫補助金として294億11百万円の交付を受けた。
コロナ病床確保に都立病院が果たした役割は大きいが、コロナ以外の診療への影響も大きかったものと思います。
Q2 そこで、令和2年度の入院患者数や外来患者数、手術件数など診療実績はコロナ前の実績となる昨年度と比べどうだったのか、伺う。 |
A2
- 令和2年度の入院患者数は、コロナ患者の受入れ体制を整備するため、コロナ病床の確保や、医師・看護師をコロナ患者への対応にシフトしたため、患者を受け入れられる病床が縮小したことにより、前年度と比べ21万7,588人減少、率にして約15.8%の減となった。
- また、外来患者数は、整形外科や診療放射線科、歯科などにおける不急の診療の通院間隔が伸びたことなどにより前年度から33万1,096人減少、率にして約17.3%減となった。
- 手術件数は、緊急の手術には対応してきたが、稼働病床数に制限があったことから外科等の予定手術の減により、前年度から8,362人減少、率にして約23%の減となった。
- 救急患者数は、外出自粛の影響で小児科において子供のけがやインフルエンザ等の患者が減少したことを始め、各診療科において患者が減少したことにより、前年度より4万7,953人減少、率にして31.7%の減となった。
Q3 外来や手術では約2割、救急では約3割の患者数の減少があったとのことで大変な減少数となりました。こうした状況における令和2年度の経営状況について伺う。 |
A3
- まず、コロナを含む診療に係る収支では、入院・外来等の患者数の減少したことに伴う診療収入の減少や特殊勤務手当の拡充、多摩総合医療センター専用医療施設の運営などにより経費は増加し、前年度と比べ145億79百万円悪化した。
- また、コロナ関連の国庫補助金として304億73百万円を受入れたことにより、前年度と比べ国庫補助金が301億55百万円増加した。
- こうしたコロナ関連の国庫補助金を受入れたことに伴い、一般会計繰入金が前年度と比べ22億93百万円減少した。
- その結果、令和2年度の病院会計全体の収益・費用から新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金等の特別利益・特別損失を除く、経常収支は102億19百万円の黒字となり、昨年度の42億1千万円の赤字と比べ144億28百万円改善した。
今、決算概要について説明をいただいましたが
Q4 この決算について、都はどのように評価し、都立病院の経営にどのように取り組むのか伺う。 |
A4
- 令和2年度は5年ぶりに経常収支で黒字となったが、コロナ関連の国庫補助金を除くと200億円の赤字と過去30年を見ても最大の赤字額となっており、経営状況は今までになく厳しい状況にあると認識している。
- こうした状況を改善するため、令和2年度65.9%まで低下した病床利用率を、まずはコロナ前の状況まで早期に回復させることが必要であり、新たな入院患者の確保に積極的に取り組んでいく必要がある。
- 具体的には、感染状況を踏まえつつ、地域の医療機関からの紹介患者を増やしていけるよう、コロナで実施できなかった地域の医療機関への連携訪問を強化するとともに、患者に選ばれる病院を目指し、広報の強化と患者サービスの充実に取り組んでいく。
- 今後は、こうした取組により入院患者の確保を図るとともに、医薬品や医療機器等の購入に当たり今まで以上にスケールメリットを活かした取組を行うなど費用の節減にも努め、経営基盤の強化を図っていく。
コロナ関連の国庫補助金を除くと200億円の赤字と過去30年を見ても最大の赤字額となっており、経営状況は極めて厳しい状況にあるとのことです。
現在、都立病院は、コロナ対策に全力で取り組んでおります。
不採算などの理由で一般の医療機関では対応困難な先への医療の提供を役割としておりますので、経営だけを取り上げて評価すべきでないことは理解していますが、安定的かつ継続的に行政的医療を提供していくためにも不断の経営努力を続けて頂きたい。
- 新型コロナ感染症への対応について伺います
(最初にコロナ後遺症相談窓口)
○ 新型コロナウイルス感染症については、治療が終わり、回復した後も、長引く後遺症が問題となっています。
○ 本年2月には、東京iCDC専門家ボードから、若年者でも、呼吸困難や倦怠感、嗅覚障害等のコロナ後遺症で苦しんでいる方が一定数いることが報告されました。
○ 一方で、後遺症の実態は明らかでなく、後遺症に悩む方々の受け皿も不十分でありました。
○ こうした状況を踏まえ、都は、都議会公明党が求めてきた「コロナ後遺症相談窓口」を都立・公社病院に設置し、本年3月から後遺症に悩む方々の相談への対応を開始したものであります。
Q5 そこで、コロナ後遺症相談窓口の設置状況と相談件数について、伺う。 |
A5
- 新型コロナウイルス感染症に罹患した患者の中には、治療・療養終了後も、呼吸の苦しさや味覚・嗅覚の異常などの症状に悩んでいる方がいる
- こうした方からの受診や医療に関する相談に対応するため、令和3年3月から順次、都立・公社病院の患者支援センターに「コロナ後遺症相談窓口」を設置
- 相談窓口では、看護師等が電話で症状等について伺い、症状に応じて医療機関の受診につなげるなど支援
- 都立病院では、令和2年度において、令和3年3月30日から大塚病院、3月31日から駒込病院で相談受付開始、初日から多様な相談が寄せられた
- 令和3年4月に2病院に窓口設置、現在4病院で対応。9月末までの相談受付件数2,077件
○ 相談窓口の設置から約半年で、2千件を超える相談が寄せられたとのことで、非常に必要性が高いことがわかりました。コロナ後遺症については今のところ確立した治療法がないため、相談による支援が担う役割は大きいと考えます。
○ 先日(10月8日)、国立国際医療研究センターから、新型コロナウイルス感染症の後遺症に関する調査結果が発表された。この調査によると、新型コロナウイルス感染症を発症又は診断の半年後も4人に1人が何らかの症状に悩んでいるとのことでした。
○ また、私の地元である世田谷区も、今年7月から8月にかけて実施した新型コロナウイルス感染症の後遺症についてのアンケート調査結果の速報を9月に公表したが、感染した人の半数近くに倦怠感など何らかの症状があるとの結果でした。
○ この夏の第5波を踏まえると、後遺症に悩む方はますます増加することが見込まれる。
○ 引き続き、相談者に寄り添った丁寧な対応により、後遺症に対する不安を和らげることができるよう支援を要望いたします。
(次にコロナ専用医療施設)
〇次に、旧府中療育センターを活用した新型コロナウイルス専用医療施設について伺います。
〇本施設は、医療法に基づく、多摩総合医療センターの病棟の一つとして位置付けられ、令和2年12月16日に開設しております。
〇そこで
Q6 令和2年度、府中に整備したコロナ専用施設の運用状況について見解を求めます。 |
A6
- 本施設は全く新しい施設であり、運用するに当たっては、医療安全や感染対策に十分配慮するとともに、多摩総合医療センター本館との連携や病棟内のオペレーション等を確認するため、段階的に病床を拡充
- 具体的には、令和2年12月16日には32床から運用を開始し、その後、1月18日に66床体制、2月1日に100床体制
- 令和2年度については、患者受入れピーク時には、2月5日に1日最大で63人の患者を受入れ
〇 この新型コロナウイルス専用医療施設が、医療安全上、段階的に病床を拡大してきたことがわかりました。
〇 病棟を運用するに当たっては、病床の確保も重要ですが、この施設はコロナ患者さんを受け入れるための新しい施設であるため、そこで働く医療従事者を確保するとともに、患者や職員の安全確保に配慮した運用についても考慮する必要があります。
〇 そこで、
Q7 医療従事者をどのように確保し、また、どのような取り組みによって安全な運用につなげてきたのか、都の見解を求めます。 |
A7
- 医師、看護師については、都立・公社病院全体で応援体制を確保
- とりわけ、各々の病院から職員が派遣されることから、チーム医療の推進のため、医療従事者間の円滑な意思疎通を図ることが重要
- そこで、多摩総合医療センターの医師や看護師が中心となり、新しく派遣されてくる医療従事者への事前のガイダンスや研修などを実施
- また、実際に患者に対応する際は、治療の標準化を定めたクリニカル・パスを活用することで、チーム一体となった医療の提供を行い、入院する患者に対し安全・安心な療養環境を構築
〇 本施設については、都議会公明党が、コロナ専用病院の設置の必要性を求めてきたことに対し、都が、迅速に対応したことを評価します。
〇 今後、第6波に着実に備え、このコロナ専用医療施設の役割を十分に果たし、一人でも多くの患者さんを受け入れていただくよう要望して、次の質問に移ります。
【3】安全・安心で質の高い医療の提供について伺います
○ 病院経営本部が平成30年3月に策定した「都立病院新改革実行プラン2018(ニイゼロイチハチ)」では、安全・安心で質の高い医療の提供のため、「医療の質の向上を一層推進するとともに、患者にわかりやすく医療情報を提供するため、医療の質に関する新たな評価指標を設定します」とあります。
○ これを実現するため、都立病院では、「QI(クオリティ・インディケーター)」を導入して取組を開始したとのことでしたが、
Q8 具体的にはどのような取組を行ったのか、伺います。 |
A8
- QI(クオリティ・インディケーター)とは、医療の質を客観的な数値で表すさまざまな指標であり、病院が自らの医療の質を「見える化」することで、改善に向けた取組を進めることを目的としている
- 都立病院においては、令和元年度に、各病院の医師等によるPTを設置し、指標の考え方などについて検討、それぞれの病院の特性に応じたQIを導入
- その後、各病院では、導入したQIに基づき医療の質の改善に努めている。例えば、墨東病院では、入院患者の「褥瘡の発生率」を指標の一つとし、病棟看護師に対する褥瘡予防研修や、体圧分散寝具等の有効利用などの取組を行い、令和元年度の72%から令和2年度の0.69%へと改善させている
- こうした取組は、病院のホームページで公表。公表に当たっては指標や数値だけでなく、指標の意義や効果等についての説明を加えるなど工夫
○ 各病院において、医療の質向上のための努力が行われていることを確認しました。
○ 今後も継続して取り組んでいただき、都民により良い医療を提供していただくことを求めます。
【4】専門性が高く良質な医療人材の確保・育成
Q9 令和2年度において、コロナ禍で人材確保にも苦労があったかと思うが、東京医師アカデミーでの取組を伺う |
A9
- 東京医師アカデミーでは、都立、公社病院のスケールメリットと豊富な症例を生かし、各分野の専門医の受験資格を取得することができるプログラムを提供
- アカデミーではこれまで、優秀な人材を全国から確保するため、研修希望者の病院見学の受入や、全国の病院が参加する合同説明会への参加などの広報を実施
- この合同説明会におけるアカデミーの出展ブースには、令和元年度には1,606名の訪問があったが、令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響により参加を予定していた説明会自体が中止
- このため、令和2年7月以降、医学生や研修医向けの情報発信サイトで新たに各病院のページを掲載したところ、令和2年度のページアクセス延数は、合計で約3万6千件
- 令和3年4月の採用者は92名となり、前年度の91名、前々年度の93名と比較しても同規模のアカデミー生を確保
Q10 東京看護アカデミーの取組についてはどうであったか。 |
A10
- 東京看護アカデミーでは、新人からベテランまで、一人ひとりの習熟段階に応じたキャリアの形成を組織的に支援し、認定看護師等の資格取得支援などに取組
- 令和2年度は、認定看護師は、7名が新たに資格を取得し、145名が年度末時点で在籍、専門看護師は、1名が新たに資格を取得し、15名が年度末に在籍
- これらの認定看護師や専門看護師は、チーム医療での中心的な役割を担うなど幅広く活躍しており、都立病院における医療の質の向上に貢献
- また、令和2年度においては、コロナの影響で集合研修の実施が困難となるなど、職員の研修環境の構築に苦労したが、集合研修を、オンライン形式やオンデマンド形式で実施するなど、工夫を図りながら対応
東京の医療を担う医師を確保・育成するため、研修や指導体制を充実していくことは極めて重要なことと認識いたします。
認定看護師、専門看護師や特定行為を行う看護師の育成の為に、資格取得支援や研修をさらに充実して頂き、東京都の医療体制を堅持して頂きたいことを求めて次の質問に移ります。
【5】都立・公社病院の独法化
〇 次に、独法化について質問します。
〇 都立・公社病院の独法化については、先般、第三回定例会で定款が議決されましたが、令和2年度は、その準備予算が計上されていました。
Q11 そこで、昨年度どのような準備をしたのか伺います。
A11
- 昨年度は、移行に向けた準備業務を円滑かつ効率的に進めるため、技術的・専門的な支援を受ける法人設立準備支援業務委託も活用しながら、独法化のメリットを活かした医療ニーズの変化に機動的に対応できる病院運営を実現するための、法人の組織運営体制や、独自の財務制度、柔軟な人材確保と働きやすい環境整備に資する人事制度などの構築に向け、準備・検討
- また、独法化後の医療機能強化の方向性について、各病院とも意見交換しながら、具体的な検討
〇 支援委託も活用しながら、様々な準備を進めたとのことでした。
〇 先般の第三回定例会でも議論がありましたが、独法化は、病院現場の実情に合わせた独自の人事制度や財務制度の構築により、今よりも機動的な病院運営ができることがメリットです。各種制度については、引き続き、しっかり検討・準備して、独法化の効果が最大限発揮できるようにしていただきたいと思います。
〇 特に、人事給与制度については、職員の意見も聞きながら、よりやりがいをもって安心して働き続けられる環境を整備していただきたいと思います。
〇 また、医療機能強化の方向性についても検討したとのことでした。独法化に向けては、各病院の医療がどうなるのか、ここが都民の一番の関心事だと思います。
Q12 そこで、医療機能強化の方向性については、具体的にどのような検討を行ったのか伺います。
A12
- 独法化後の医療機能強化については、急速な高齢化の進展など今後の医療環境の変化に柔軟かつ機動的に対応していくための、行政的医療等の一層の充実と地域医療の充実への貢献の二つの柱を基本として検討
- 独法化により、機動的な人材確保や民間医療機関等への職員派遣等が可能となることから、こうした独法化のメリットを生かし、各病院の特長に応じた機能強化
- 具体的には、例えば、松沢病院において、医師等を増員して行政的医療である精神科身体合併症医療の体制強化を図り、高齢化に伴い増加している様々な身体疾患を併せ持つ認知症の症状を有する患者等をより多く受け入れていくことや、駒込病院において、緩和ケア認定看護師などがんに関連した専門人材を地域のニーズに応じて訪問看護ステーション等に派遣し、地域全体の技術力の向上を図るなどの取組を検討
〇 8つの都立病院は、専門性も特色も様々であり、それぞれの地域の状況も異なります。地域ニーズも踏まえ、都民に必要な医療が提供できるよう検討することが重要と考えます。
〇 団塊の世代が後期高齢者となる2025年はもうすぐであり、住み慣れた地域で安心して療養生活が送れるよう、超高齢社会の本格化に向けた体制づくりも重要です。現在は、各病院がコロナ最優先で対応していただいていますが、コロナ対応に併行して、今後の様々な医療課題にもしっかり対応できるよう、検討を進めていただくよう要望して質問を終わります。